先日、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会でオンラインによる演説が行われました。
賛否がありますが、日本はロシアの敵国と捉えられるかもしれません。
ロシアがウクライナへ軍事侵攻を始めてから、当ブログではロシアで見られる生き物を紹介しております。
第3弾はごく稀に日本に越冬のために飛来することもあるツル、ソデグロヅルです。
ソデグロヅルの基本情報
大きさ:全長130cm前後
寿命:20~30年
生息地:アフガニスタン、イラン北部、インド北部、中国東部、パキスタン、ロシア北東部と中北部
ソデグロヅルの生態・特徴
ソデグロヅルは全長130cm前後で、翼を広げると230〜260cm程になります。
寿命は野生の個体で20~30年と言われていますが、 動物園で飼育されていたソデグロヅルが61年生きたという記録があります。
もう少し詳しく見てみましょう。
見た目
額から顔にかけては、羽毛が無く赤い皮膚が裸出しています。
全身の羽衣は白いのですが、雨覆羽と風切羽の初列が黒いので、“袖黒鶴”という和名がつきました。
静止時にはこれらが隠れるので、全身が白く見えとても綺麗です。
以前当ブログでも紹介しましたタンチョウに似ていますね。
幼鳥は羽毛が黄色く可愛いです。
虹彩と嘴
瞳孔の大きさを調整する虹彩は黄色で、赤みのある褐色の嘴は太く長く、これにより水底にある植物の根を食べることができると考えられています。
人嫌いなソデグロヅルの繁殖
求愛は、ペア間で頭部を伸ばして上下に振りながら、翼を半開きに広げて鳴き声を交わしあいます。
とても神秘的な光景ですが、繊細なソデグロヅルはヒトを嫌いますので、ソデグロヅルの見事な求愛のダンスは遠くからしか見ることができません。
繁殖形態は卵生で、1回に1〜2個の卵を産み、27〜29日ほど抱卵します。
どこに生息して、どんなものを食べているの?
ソデグロヅルは、湖沼、湿原、干潟、農耕地などに生息していますが、夏季と冬季で生息域が異なります。
夏季にはロシア北東部や中北部で繁殖し、冬季になると鄱陽湖、インド北部やイラン北部で越冬します。
稀に冬季に日本に飛来し越冬する個体もいます。
食性は植物食傾向の強い雑食で、植物の芽、根、果実、種子、昆虫、魚類、カエル、小型の哺乳類などを食べています。
繁殖地では動物食傾向が強いのですが、越冬地や渡りの途中は植物食傾向が強いという特徴を持ちます。
世界情勢や開発の影響を受けるソデグロヅル
ロシア中北部で繁殖し、インドやイランで越冬する個体群は、渡りの途中に飛来するアフガニスタンやパキスタンの不安定な情勢と狩猟の習慣や、越冬地のイランの漁業による影響をもろに受けるので、絶滅の危険性が高いと考えられています。
また、鄱陽湖で越冬する個体群も三峡ダム建設による環境の変化が懸念されています。
三峡ダム建設と言えば以前当ブログでも長江流域で影響を受ける生き物を紹介しました。
イランでは政府や研究者、国際ツル財団による啓蒙活動が進められ、インドでは越冬地がケオラデオ国立公園として保護されています。
希望の飛“笑”
ソデグロヅルに関する情報でこれだけは外せないという情報として2012年にロシアで行われたキャンペーン“希望の飛翔”が挙げられます。
絶滅のおそれがある野生生物を掲載するレッドリストに含められているソデグロヅルの個体数を維持することを目的に行われたキャンペーンで、あのウラジーミル・プーチン大統領も参加しました。
その参加の仕方が独特で、大統領自身がハンググライダーに乗り、越冬のために暖かい地方へと飛んで行くソデグロヅルの幼鳥の群れを導くガイドをするというもの。
ちなみに結果は、大失敗に終わっております。
ソデグロヅルの幼鳥自体は後に航空機に乗せられロシア中央部のリャザンにある野生動物保護区に戻され、ことなきを得ました。
笑いものとなった白い飛行服を着たプーチン大統領の姿だけが残ったキャンペーンとなりました。
後日、プーチン大統領は批判的な野党勢力に対して「渡りを拒むのは弱いツルだけだ」と揶揄していたようです。
まとめ
ソデグロヅルの紹介をしました。
西シベリアの先住民族ハントゥイ族の間では聖なる鳥とみなされているソデグロヅル。
見た目がタンチョウに似ているので、日本人の私たちにとっても愛着が湧きますよね。
また、渡鳥はその生態が世界情勢をもろに受けるという部分がなんとも切ない気持ちになります。
現在ロシアとウクライナの問題がどう着地するのか想像もつきませんが、連日報道で人間の死亡数が報道されても、他の生き物の死亡数は報道されません。
戦争で命を失うのは人間だけではないということを覚えておいてほしいと思います。