直近4回にわたり当ブログでは、中国の生き物を紹介してきました。
北京2022冬季パラリンピックもまもなく開会されようとしています。
今回はヨウスコウアリゲーター(ヨウスコウワニ)を紹介させていただきます。
こいつを抜きに中国の爬虫類は語れません。
ヨウスコウアリゲーターの基本情報
大きさ:1.5m、40kg
寿命:20〜30年、飼育下で70年
生息地:中華人民共和国の長江下流域
ヨウスコウアリゲーターの生態・特徴
口先は短く、体色は褐色や黒で、縞模様が入り、腹面は淡褐色。
幼体は体色が黄色く、黒い縞模様が入る。
口角は切れあがり、堅い獲物を噛み砕くことに特化しています。
もう少し詳しく見てみましょう。
どんなところに住んでるの?
ワニ目アリゲーター科では本種のみがユーラシア大陸に分布しています。
和名の“ヨウスコウ(揚子江)”とは、長江下流域を指しています。
流れの緩やかな河川や湖沼、池などに生息し、冬になると冬眠します。
ちなみに、日本でも大分県安心院盆地にある鮮新世の地層からヨウスコウアリゲーターの化石が発見されています。
何を食べてるの?
ヨウスコウアリゲーターは動物食で、主に貝類を食べていますが、魚や鳥も食べます。
人食いワニ?
過去にもワニは紹介してきました。
ワニといえば人を食うという印象が強いですよね。
しかし、ヨウスコウアリゲーターは人間に無害と言われています。
水田に侵入して稲を倒したり、灌漑用のダムを破壊したりするので、厳密に言えば害獣とみなされることはありますが、人間を襲ったという確実な記録はないようです。
繁殖
ヨウスコウアリゲーターの繁殖形態は卵生で、枯草を集めた塚状の巣に10〜40個の卵を産みます。
約70日で孵化します。
日本国内では2001年に札幌市円山動物園で、初めて飼育下の繁殖に成功しました。
見学中の子どもが飼育槽のガラスを叩いたところ交尾を始めたことをヒントに、ガラスを打つ音による交尾促進法が発案されました。
このガラスを叩いていた子どもも、急にワニが交尾を始めたので、ビックリしたでしょうね。
札幌市円山動物園一度行ってみたいですね。
公式ホームページはこちら
絶滅寸前から一時的に回復
ヨウスコウアリゲーターは現在、国際自然保護連合(IUCN)が作成した絶滅のおそれのある野生生物のリストで、“絶滅寸前(CR)”に指定されており、早急な保護と保全を必要としています。
河川の汚染や周辺地域の開発、漢方薬としての乱獲の歴史により個体数が激減しました。
1960年に行われた個体数調査ではわずか50匹ほどしか確認できず、中国国家一級重点保護野生動物に指定されました。
その後保護センターによる人工繁殖で4,000匹にまで回復しましたが、それでも自然界に存在する個体数は100匹を下回っており、まだまだ絶滅の危機にあることに変わりはありません。
実は龍のモデル?
少し話は変わりますが、皆さん龍はご存じですよね?
干支の一つにもなっていますが、龍だけ架空の生き物に違和感を感じます。
おめでたい生き物として中国から伝わった文化ですが、いくら架空の生き物とは言え、きっとモデルとなった動物がいるのではないかなと考えてしまいます。
そこで、龍という概念が生まれたきっかけとなった数ある説の中でも、私はヨウスコウアリゲーターが龍のモデルだとする説が一番しっくりきます。
春秋時代に描かれた龍の図がワニそっくりであり、そもそも今よりもヨウスコウアリゲーターが広く分布していました。
貴族の狩りの図の中に様々な動物が登場するのにワニが描かれていないと言われています。
その理由は、龍(ワニ)を狩りの対象としてはいけなかったからではないかと私は思います。
また、ヨウスコウアリゲーターは雨が降る前に鳴くのですが、その声が想像する龍の鳴き声と同じような重低音を発します。
これらを総じて考えると、ヨウスコウアリゲーターが龍のモデルと言えるのではないでしょうか?
イグノーベル賞のヨウスコウアリゲーター
2020年のイグノーベル賞をご存知でしょうか?
イグノーベル賞とは「人々を笑わせ考えさせた研究」に与えられる賞なのですが、2020年の音響学賞がヨウスコウアリゲーターに関するものでした。
その内容は、ヨウスコウアリゲーターにヘリウムガスを吸わせても声が変化することを調べた功績に対してで、これにより、ヨウスコウワニの発声の仕組みが、人や鳥類と同じ、のどの奥にある声門などの器官で音を作り、口までの通り道にある声道といった空間内で音を共鳴させていることが分かりました。
なんともユニークな発想ですよね。
まとめ
ヨウスコウアリゲーターに関してお伝えしました。
長江という生物多様性の高い場所でも、人間が入ってくると一気に崩れるということが分かりますね。
ヨウスコウイルカがほぼ絶滅したと言われています。
ヨウスコウアリゲーターはなんとか個体数が増えてくれればいいなと思います。