瀬戸内の春告魚イカナゴは夏を寝て過ごす

瀬戸内の春告魚イカナゴは夏を寝て過ごす

イカナゴのイラスト
昨日“季節の情報”としていかなご漁のお話をさせていただきました。
不漁が深刻な問題となっているそんなイカナゴですが、

生き物として見てみた時にどんな生き物なのでしょうか?

普段食べ物としてしか見ていないイカナゴを今回は生き物として紹介したいと思います。

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イカナゴの基本情報

大きさ:20cm(3cm前後が最も美味しいと言われている)
寿命:5年程度
生息地:北海道から九州・朝鮮半島など

イカナゴの生態・特徴


イカナゴはイワシのように沿岸海域における食物連鎖の土台を担っている重要な魚であり、晩春を表現するための季語にも用いられます。
もう少し詳しく見てみましょう!

様々な地方名

イカナゴは地域によって様々な名称で呼ばれています。

イカナゴの稚魚を、東日本では「コウナゴ(小女子)」、西日本では「シンコ(新子)」と呼び、成長したものを北海道では「オオナゴ(大女子)」、東北では「メロウド(女郎人)」、西日本では「フルセ (古背)」や「カマスゴ(加末須古)」や「カナギ(金釘)」などと呼ばれています。

魚は地方名が多いほど、昔から人と密接に関わってきたと思います。
イカナゴも昔から多くの人に食されていたのでしょう。

何を食べてるの?

イカナゴの餌は主にプランクトンです。
それ故、“きれいになりすぎた海”では個体数が減少することになるというわけです。

夏眠

イカナゴの最大の特徴を挙げるとしたら、この夏眠でしょう。

冬眠の夏バージョンだと思っていただければ分かりやすいと思います。

北方系の魚であるため、水温が19℃に達する6月頃に、大群で一挙に砂に潜り込み、3.5~5.0cmぐらいの深さに身を隠してそのまま夏を過ごします。
夏眠中は餌を食べませんが、体内に脂質状物質を蓄えており、極端に痩せ細ることはありません。
秋になり水温が下がってくると、砂中から出て再び餌を食べ始め、しばらく経つと産卵期に入ります。
産卵期は12月頃から翌年春の5月頃で、寒冷な水域ほど遅くなります。
なぜ夏眠するのかは明らかになっておりませんが、産卵に備え敵から身を守っているのではないかと言われております。

イカナゴとキビナゴとシラスの違い

みなさんはイカナゴとキビナゴとシラスの違いちゃんと分かっていますか?

イカナゴはこの記事のメインでもある、

スズキ目ワニギス亜目イカナゴ科の魚です。

漢字では「玉筋魚」「如何子」と書き、稚魚は釘煮などに使われています。
鮮魚というよりも、加工品として売られていることが多いですね。
では、キビナゴとシラス、このイカナゴとどう違うのでしょうか?

キビナゴ


キビナゴは、

ニシン目ニシン科の魚です。

イワシの仲間で、姿もイワシに似ていますね。
鹿児島で「帯」のことを「きび」と言うのですが、お腹の線が帯のように見えることから、「キビナゴ」という名前になったとされています。
全長は約10cmで、刺身で食べると美味しいですよね!
天ぷらにしても美味しいですよ。

シラス


シラスは、

実は魚の名前ではありません!

イカナゴ、ウナギ、カタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシ、アユ、ニシンなど、体に色素がない魚の稚魚を「シラス」と呼んでいます。
ちなみに、スーパーで売られているシラスのほとんどは、カタクチイワシの稚魚です。

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いかなご漁と不漁問題

イカナゴは食物連鎖の底辺に位置しているため、

沿岸漁業においても重要な位置にあります。

集魚灯を用いた敷網漁や定置網漁、船曳網により捕獲されるのですが、乱獲や生息環境の変化および海砂の採集による生育適地の破壊により、日本各地で漁獲量は激減しています。
特に瀬戸内海では夏眠に適した海砂がコンクリートの骨材にも適しているため、イカナゴが夏眠中の海砂が建設資材としてゴッソリと採取されることで、漁場が壊滅的被害を受けているという点も、“きれいになりすぎた海”と相まって、いかなご漁が不漁になる要因と言われています。
瀬戸内海や伊勢湾ではその年ごとに生育度合いや推定資源量を調査した上で漁獲量を決めています。
ちなみに、ヨーロッパに生息するイカナゴの仲間はこの夏眠という習性を利用し捕獲されるようです。
潮が引いた時に潮干狩りの要領でイカナゴを掘るので、

夏にイカナゴのシーズンが到来します。

いかなごの釘煮


兵庫県の淡路島や播磨地区から阪神地区にかけての瀬戸内海沿岸部で、イカナゴは“いかなごの釘煮”という郷土料理で親しまれています。
水揚げされたイカナゴを醤油、砂糖、生姜などで煮込み、煮汁が減ったところでみりんを加えながら煮汁がなくなるまで数回煮詰めることを繰り返して作ります。
見た目はちりめん山椒のようですが、砂糖とみりんで煮詰められているので、表面があめ状になっています。

この姿が錆びた釘に見えるということから「釘煮」と呼ばれるようになったとする説が有力です。

また、近畿地方の中でも、前述した地域を除く他の地域ではいかなごの釘煮はあまり食べられていません。
私の妻はこの地域で産まれているので、祖母が毎年いかなごの釘煮を作っていたようですが、私の祖母は山椒の実が出回る頃にちりめん山椒は作ってくれましたが、いかなごの釘煮を作ってくれたことはありません。
存在を知ったのも社会人になってからでした。

いかなご醤油

イカナゴって不思議なことにいかなごの釘煮が食べ方の主流で、他にあまり食べ方を見ないんですよね。
しかし、香川県では、イカナゴを原材料とした魚醤、

いかなご醤油というものがあるようです。

かつて、秋田県の「しょっつる(ハタハタが原材料)」や能登半島北部の「いしる(イワシやイカの内臓、頭、骨を塩漬けして発酵させたものが原材料)」とともに“日本三大魚醤”と呼ばれていたみたいです。
1950年代に途絶えましたが、近年になって少量ではあるものの、復活生産されるようになりました。
今度一度探して買ってみよう!

まとめ

昨日に引き続き、イカナゴ関係の記事を作成させていただきました。

不漁が続くイカナゴですが、獲れないと言われると、ご飯をいかなごの釘煮で食べたくなってきます。
また、特徴で言うと夏眠するというちょっと変わった特徴を持っています。
小さな魚で、イカナゴ自体がいなくても私たちに直接問題はないですが、

この魚がいなくなると巡り巡って困るのも私たち人間ということになります。

なんとか個体数が回復して欲しいですね。

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