遺伝子組み換え蚊は失敗か!?一番人間を殺した蚊の感染症の脅威

遺伝子組み換え蚊は失敗か!?一番人間を殺した蚊の感染症の脅威

遺伝子組み換え蚊のイラスト
こんなニュースが話題となりました。

「米フロリダ州で遺伝子を組み換えた蚊7.5億匹を放つ計画が承認された。」

この手のニュースを耳にする度に思うことは、「どうせ効果が出ないどころか人間の脅威となるような事態に発展するんじゃないの?」ということ。

現にこういった計画は過去にも実行され思うような効果が得られていないことが多い。

今回はこの計画にどんな問題があるのか、蚊による感染症がどれぐらいの脅威となっているのか、また、過去に計画された同じような計画が裏目に出た事例を紹介しながら、蚊との付き合い方を考えてみましょう。

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遺伝子を組み換えた蚊7.5億匹を放つ計画の概要

まずは問題となった計画の概要から見ていきましょう。
遺伝子を組み換えた蚊を放つ計画の目的は簡単、感染症を媒介とするネッタイシマカという種類の蚊を殺虫剤散布の代用として駆除出来るのかどうか検証するというもの。
検証に使われる蚊は「OX5034」という、幼虫の段階で死ぬメスの子孫しか生まれないように遺伝子を操作された蚊。
蚊はメスだけが血を吸い卵を産み、オスは花の蜜しか吸わない為、感染症を媒介させることはありません。
蚊によって感染症が広がる仕組みは、病原体を持つ人や動物を蚊が刺し、血液とともに病原体を取り込みます。

その病原体が蚊の体内で増殖し、次に人を刺した際にその刺された人の体内に病原体が注入されることによって感染します。

そのサイクルを断つ為の計画を担っている蚊が、この「OX5034」という蚊というわけです。
「OX5034」は、遺伝子組み換え生物の開発を手掛けるオキシテック(英)が開発したもので、

フロリダ州のフロリダキーズという細長い列島とテキサス州ハリス郡というテキサス州南東部の郡で、2021年からこの蚊を放つ計画が正式に承認されました。

この計画が承認されるまでに数年がかりで検証が行われてはいるものの、まだまだ人間や環境へのリスクが問題視されている中での計画実行に対して、地元住民や環境保護団体が非難している事で話題となりました。

蚊が媒介する感染症の脅威

日本では2014年に蚊を媒介にしたデング熱という感染症が話題となりました。

昨年(2019年)にも感染したのではないかという症例もありましたが、日本では毎年数人の日本脳炎患者が報告される程度で、蚊による深刻な事態はどこか遠い国の話と感じてしまう印象があります。
しかし、世界中の多くの国では蚊による感染症の拡大は深刻な問題となっています。
以前から、当ブログで生き物を紹介する際、人に脅威となる動物の場合その危険性も紹介してきました。

1年間で人間を殺した数を大体でお伝えしますと、ヘビで50,000人、ワニで1,000人、カバで500人、サメで10人。
そして蚊はなんと、725,000人の人を殺しているという調査結果があります。
ワニやサメのように噛み殺されているわけではないことは推測できますよね。
そうです、感染症が原因となり、世界で725,000人という人が蚊によって命を落としています。
上述したデング熱に日本脳炎、そしてウエストナイル熱、チクングニア熱、マラリア等の感染症が挙げられますが、いずれも重症化すると命を落とす危険性があるので、遺伝子を組み換えた蚊を放ってまで蚊は根絶したいというわけです。

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遺伝子を組み換えた蚊を放つことで裏目に出た事例

蚊が媒介とする感染症の怖さ、

いかに人間が蚊によって命を失っているかは分かりました。

ではなぜ多くの人が遺伝子を組み換えた蚊を放つことを非難するのでしょうか。
確かにこの世の中に不必要なものはありません(人間は不必要かもしれませんが…)。
蚊も食物連鎖の一部となっていますので、蚊を根絶するとクモやカエルに大きな影響が出てきます。
しかし、それだけの理由でこの問題が非難されているわけではなく、過去に遺伝子を組み換えた蚊を放つことで裏目に出た事例がある事もこの問題が非難される一因ではないでしょうか。
少しその事例を紹介しましょう。
ブラジルのジャコビナでは、

1週間ごとに45万匹の遺伝子を組み換えた蚊を放つ大規模な実験が行われました。

今回問題となった上記の蚊とは少し違いますが、同じように子孫を残せないように操作するという部分は同じです。
蚊の放出は27か月にわたり行われました。
当初は個体数が減少していったのですが、徐々に個体数が回復していきました。
原因としては、自然界の蚊が遺伝子を組み換えられた蚊との繁殖を避けていると指摘がありました。
しかし、蚊を捕獲し遺伝子解析を行った結果、遺伝子を組み換えられた蚊の遺伝子を受け継いだ個体が発見されました。
当初の予定では子孫を残せないはずの蚊が一定数子孫を残していった事になります。
さらに驚くべきは、それらの蚊は従来の蚊より強い抵抗力を持っている可能性があるという事。
まだ可能性があるという見解なだけで確証はありませんが、最悪の場合より多くの人間の命が奪われるようになるかもしれないということです。
こういった事例がある以上、簡単に遺伝子が組み換えられた蚊を放つという計画に賛同は出来なくなってしまいますよね。

まとめ

蚊は刺されるとかゆい。
それだけならまだ問題はないのですが、多くの命が蚊によって奪われるとなると話は変わってくる。
しかし、上述しましたように遺伝子を組み換えた蚊を放つことにも大きな抵抗はあります。
また、

日本でもカダヤシを導入し蚊を減らすことでメダカの数が減ったり、殺虫剤を撒くことで天敵の虫が減り蚊が増えるという事例もあります。

一方で、人間が整備した町中の方が自然の中でキャンプしている時より蚊に刺されるという経験も多くの方がされていると思います。
そもそも蚊を根絶さようという考え方と自然環境へのリスクはどこまでいっても平行線で答えが出ないでしょう。

この問題に非難できる人間は森の中で裸で自給自足している人間だけです。

全て人間が悪い。
そう考えると、遺伝子組み換えの蚊を放つことが一番シンプルに人間らしくていいのかもしれませんね。

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