9月に入り、まだまだ暑い日も続きますが、それでも季節が秋に着々と進んでいると感じられるようになりました。
そんな秋という季節、「○○の秋」と呼ばれるものが多い季節です。
この「○○の秋」っていう表現、
日本には四季があり、春も夏も冬も愛でるべき風物詩がある中、やはり秋だけ「○○の秋」と表現する事で、その対象を特別な印象に植え付けられてしまいます。
そんな「○○の秋」、パッと思いつくだけで以下の数があります。
- 食欲の秋
- 読書の秋
- スポーツの秋
- 芸術の秋
別に秋じゃなくても食欲はあるし、春先新年度のスタートの時期の方が本を読んでいる気がするし、ウィンタースポーツが好きな私は冬の方がスポーツしているし、デザイナーの私は1年中芸術に触れるようにしています。
そこで今回、この「○○の秋」の由来を見ていきながら、なんでこんなに「○○の秋」という表現が多いのかを考えてみましょう。
「食欲の秋」の由来
まずは、「食欲の秋」の由来から見ていきましょう。
近年では、魚介類の輸送技術や野菜の栽培技術の進歩により、一年中美味しいものが食べられるようになりましたが、
そんな旬な食べ物が出回る時期であると同時に、冬眠に向けて秋に脂肪を蓄える動物の機能が人間にもあるのではと言われている事で、秋は食欲のわく季節、「食欲の秋」と呼ばれるようになったと言われています。
「読書の秋」の由来
次に「読書の秋」の由来を見てみましょう。
実は古代中国の漢詩が由来となっているようです。
8世紀中国の韓愈(かんゆ)という人物が学問の大切さを詠んだ詩の中に、「時秋にして積雨霽(は)れ、新涼郊墟に入る、灯火稍(ようや)く親しむべく、簡編卷舒(けんじょ)すべし」という節があり、
このイメージが「秋の夜長に読書」。
すなわち「読書の秋」に結びついたとされています。
「スポーツの秋」の由来
次は「スポーツの秋」の由来を見てみましょう。
この「スポーツの秋」、実ははっきりとした由来はなく、
当時の東京オリンピックは10月10日に開会式が行われました。
開会式が10月10日に行われた理由が、この日の天気が例年晴れることが多いというもの。
そしてこの日を記念して、もっとスポーツに親しもうという趣旨で制定されたのが「体育の日」です。
今でこそハッピーマンデー法により、日にちは流動的ですが、全国的に運動会が開かれたり、マラソン大会が多い時期であったりと、秋はスポーツをするのにいい季節というイメージになり、「スポーツの秋」と呼ばれるようになったと言われております。
「芸術の秋」の由来
最後に「芸術の秋」の由来を見てみましょう。
「○○の秋」の中でも一番ピンとこない人が多い「芸術の秋」と呼ばれるようになった由来、実は歴史がそこそこあります。
明治になり開国した日本は、西洋からの絵画や彫刻等が比較的一般的になり、日本の美術振興策として政府が文部省美術展覧会を開きました。
以降この展覧会が芸術家の登竜門となり、現在に至るまで秋には他にも多くの芸術のイベントや企画が催されるようになりました。
この公募した芸術作品で秋に展覧会を行い、芸術を楽しむという流れが認識され始めると、現在でも続く新潮社の『新潮』という雑誌にて「美術の秋」というキャッチが用いられることで、「芸術の秋」が多くの人に浸透されていきました。
なんでこんなに「○○の秋」という表現が多いのか
以上、「食欲」「読書」「スポーツ」「芸術」の『秋』の由来をお伝えしました。
由来を見てみると確かにどれも秋という季節にピッタリなものばかりですが、由来となった時代背景があるから「○○の秋」として成立していますが、
どちらかというと最近では人の意欲を刺激するだけの言葉となっていると感じます。
例えば、「食欲の秋」と言っても、クリスマスからお正月にかけての食欲に比べると秋はパッとしないですし、「スポーツの秋」と言っても、運動会も春行われる時代になったし、次の東京オリンピックも夏真っ盛りの開催。
「芸術の秋」がまだ現代においても一番しっくりくる印象。
春と冬は新しいスタートを切る意欲、夏は夏を楽しもうとする意欲、秋は夏が終わってしまって年末までのカウントダウン。
冒頭にもお伝えした、秋は一番意欲的になれない時期だと思います。
ようするに、なんでこんなに「○○の秋」という表現が多いのかというと、私は1年の中で一番人が意欲的になれず、その為の打開策として「○○の秋」と銘打って意欲を刺激しようとしているのだと感じました。
まとめ
あくまで私の意見ですが、「○○の秋」という言葉は意欲を刺激するだけの言葉。
そう捉えると、一番しっくりくる「芸術の秋」のプロモーションが他の「○○の秋」に比べて少ないのにも納得できます。